未婚女性が子宮と両卵巣を摘出するということ − 更年期障害 それだけ? |
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私は、30代後半(未婚)で 子宮と両側卵巣、そして大網を摘出しました。私の場合、病巣は片側卵巣に限局していたので、子宮・片側卵巣温存を選択することもできました。でも私はそれを選択しませんでした。それは、子供も産んでみたいけど、転移や再発の恐れ(爆弾)を抱えたまま 残りの人生を送ってゆくのは、性格上とっても耐えられない と思ったからです。ですから、子供はあきらめ、自分のこれからの命を選択しました。 私は未婚なので、もちろん、子供が産めなくなることへの複雑な思いもありましたし、私の人生にとって大きな決断でした。でも、世の中には欲しくても恵まれない方もおられます。選択に後悔はありません。 「子宮を取ったら女でなくなるのでは。 女性としてのアイデンティティが失われるのでは。」と子宮の温存にこだわる方がいると聞いたことがありますが、私の場合、そういうこだわりはありませんでした。臓器をとっても私は私。私のアイデンティティは何も変わりません。ただ、両側卵巣摘出に対しては、最後までこだわりがありました。それは、両側卵巣摘出によって今後体内で女性ホルモンが分泌されなくなること※1、そして、それによって起こりうる体の不調のこと、がことのほか心配だったからです。そしてすぐ、「更年期障害」 という漢字五文字がシュッと頭をよぎりました。
卵巣欠落症状としての更年期障害...、30代も後半の私、「う〜ん...」 なかなか受け入れがたい響きがあります。でも、平均閉経年齢は50歳前後。早期閉経で40代前半で閉経される人も最近は多いと聞きます。まあ、「予定されていた閉経年齢よりも10年早く閉経しちゃった〜!ちょっと早めだけど、まっいっかぁ。」 ぐらいに捉えて、人生だましだまし行くしかないか と考えるよりほかありません。何せ命と引き換えですから。だいたい、更年期障害も一生続くわけでもありませんし。
女性ホルモンが分泌されなくなることによって今後起こるかもしれない問題は、更年期障害だけではありません。女性ホルモンの中でも卵胞ホルモンであるエストロゲンは動脈硬化を防いだり、カルシウムの吸収を促進し骨代謝のバランスを保ち、骨を保護することで骨粗しょう症を予防する働きをしたり、そして記憶・学習機能を促進したりと脳(古い皮質の脳:大脳辺縁系にある海馬)とも密接な関係があり、女性ホルモンは生殖活動以外も重要な役割をたくさん持っています。ですから、閉経した後には、動脈硬化、骨粗しょう症、記憶・学習能力の低下などの問題にさらされることになるかもしれません。また、女性ホルモンの低下は皮膚のコラーゲンや弾力性の減少につながるので、しわ、皮膚のたるみ、乾燥などお肌トラブルに見舞われたりして、ちょっと老化という嫌な言葉が忍び寄ってくるかもしれません。
でも、女性ホルモンが分泌されなくなったことで、将来的にはそういった傾向は出てくるかもしれないけど、人によって老化の速度って違うし、恋とかしたりと、その人の気持ちの持ち方、生き方によっても全然違う方向に行く気がします。それに、現在はいい女性ホルモン補充療法があるとききます。人工閉経後、女性ホルモン補充療法をした人は肺がんのリスクが、補充療法をしていない人に比べて2倍になるとか(JPHC Study)、乳がんを罹患するリスクが上がるなどという報告もありますが、発症要因はそれだけではないと異を唱える研究者もいるし(鬼頭 2003)、そういった因果関係が証明されるには、まださらなる検討・研究結果が必要だと思うので、お医者さんとホルモン補充療法による効用とリスクなどを十分に話し合い、それらを理解した上で、必要ならそういった療法を受けてみるのも一つかな?と思います。 また、それで十分に補えるとは思いませんが、女性ホルモンと似た働きをして症状緩和をする食品もあるらしいです。例えば、大豆。大豆の成分イソフラボンが女性ホルモンに似た働きをしてホルモンの不足を補充するような作用をすることで、のぼせ(Hot Flash)などの症状を緩和させる効果があるといわれいるそうです(Nagata et. al. 2001)。次にゴマ。よくテレビでサントリーの健康食品を宣伝しているけど、ゴマの成分であるセサミン(ゴマ特有の成分リグナンの一種とのこと) には、自律神経機能を向上させ、更年期障害の症状緩和に効果があることが京大の先生とサントリー健康科学研究所等の共同実験により明らかにされ、その効用が示唆されているのだそうです。 真実のほどはよくわからないですけど、日ごろの食生活を工夫して更年期障害の症状を軽減、改善できるならそれに越したことはないです。ですから、私もこれから、もともと好物でもあるこれら大豆食品とゴマを意識して摂るようにするつもりです。また、骨粗しょう症にならないためにもカルシウムを積極的に摂取し、そして、コラーゲンもお肌のために摂っていきたいと思っています。そういえば、「マシュマロ食べてコラーゲンを摂ろう!」って少し前のテレビでやってたことありましたけど、あれって、ホントに効くのでしょうか? ちょっと疑問だけど、マシュマロはおいしいので、太らない程度に食べれば、楽しくコラーゲン摂取ができそうです。 後は、適度な運動です。これは絶対必要です、ストレスをためないためにも。不安とストレスは、ろくなことがないのでできるだけ避けてゆきたいものです。 ここまでの内容だと、「人工閉経後は不安材料ばかり...」だと思われる方もいらっしゃるとおもいます。臆病者の私もそう思いました。でも、考えてみれば、ここにあげたモノみんながみんな、人工閉経した人に起こるわけでもないし、個人差もあるだろうし、あくまで起こりうるリスクを参考までに記しただけです。それに、女性ホルモン補充療法という手段もあります。何かが起きたら、主治医と相談しながら一つ一つ取り組んでゆけばいいのではないでしょうか。 これも何かの縁、両側卵巣を摘出したことによるリスクを十分に理解したうえで、今までの生活パターン、食生活を見直してゆくことは、意外といいことなのかもしれません。結構荒れてましたから。下手したら昔より体調がよくなったりする体の部位も出てくるかもしれません...。
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参考文献 坪野 吉孝 食べ物とがん予防―健康情報をどう読むか 2002 文芸新書 文芸春秋社 森谷敏夫、サントリー健康科学研究所 他、 「更年期障害ゴマのセサミンに緩和効果」 2004/11/29 毎日新聞http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/medical/news/20041129ddm013070118000c.html 瀬川 至朗 健康食品ノート 2002 岩波新書 岩波書店 JPHC Study 厚生労働省研究班による多目的コホート研究 「生殖関連要因やホルモン剤使用と女性の肺がんとの関係について」http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/28/female_haigan.html 鬼頭昭三 脳を活性化する性ホルモン - 記憶・学習と性ホルモンの意外な関係 2003 ブルーバックス 講談社 Chisato Nagata, Naoyoshi Takatsuka, Norito Kawakami, and Hiroyuki Shimizu. Soy Product Intake and Hot Flashes in Japanese Women: Results from a Community-Based Prospective Study. American Journal of Epidemiology 2001, Vol.153, No.8, 790-793 |
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