■卵巣腫瘍とは3/04/2008


卵巣はアーモンドとか親指ぐらいの小さな臓器で、子宮をはさんで右左に1つずつあります。生殖細胞である卵子は卵巣内で成熟、そして放出され、卵巣では女性ホルモンを分泌しています。この卵巣は比較的腫瘍ができやすい臓器といわれています。

この卵巣では表層上皮性・間質性腫瘍、性索間質性腫瘍、胚細胞腫瘍、そしてそれ以外の腫瘍を含めて20種類以上の多彩な卵巣腫瘍が発生します。それらバラエティに富んだ卵巣腫瘍はさらに良性腫瘍と悪性腫瘍(がん)、そして良性と悪性の中間的な性質を持つ境界悪性腫瘍などに分類されます。

このように多彩な腫瘍が存在するため、各組織型に合った適切な治療を行うためには、当然ながら組織分類の把握・見極めがとても重要になってくるのだそうです。

ちなみに、卵巣は他臓器がんの転移の好発部位でもあるので、転移性腫瘍の存在も見逃せず、それが卵巣がん全体に占める割合は5%だということです。また、真の腫瘍ではない類腫瘍性病変というものも存在するそうです。

(例)私が患った粘液性腫瘍(境界悪性)は、表層上皮性・間質性腫瘍に分類される腫瘍の一つですが、この粘液性腫瘍にも悪性、境界悪性、良性の3種類があります。



発現頻度

日本でもっとも好発する頻度の高い腫瘍は表層上皮性・間質性腫瘍で全腫瘍の60〜70%も占め、次に胚細胞腫瘍30%、性索間質性腫瘍6%、その他が約4%とされています[1]。こういった組織型別の発現頻度は日本と欧米とはその割合に違いがあるらしいです。

ちなみに、表層上皮性・間質性の悪性腫瘍は全卵巣悪性腫瘍の70〜80%を占め[2]、その表層上皮性悪性腫瘍内で類内膜腫瘍と明細胞腫瘍が占める割合は35〜50%であると報告されています[5]。悪性腫瘍では胚細胞腫瘍や性索間質性腫瘍は少数派なんですね。

(※境界悪性腫瘍でも同じ傾向ですが、境界悪性腫瘍の場合、上皮性腫瘍カテゴリー内の類内膜腫瘍と明細胞腫瘍がほとんどみられず稀だとのことです。)




良性/境界悪性/悪性(がん)別の発現頻度は?

通常、腫瘍は病理診断によって良性・境界悪性・悪性の3つに分類されますが、全卵巣腫瘍での良性/境界悪性/悪性 の発現頻度というのは一体どのぐらいなんでしょうか?

女性医学大系(1999)の中にあった長崎大学の統計結果では、「69.6%が良性、3.6%が境界悪性、26.8%が悪性」とのことですが[3]、こうした発現頻度は各文献によって多少ばらつきがあるみたいです。

例えば、日本婦人科腫瘍学会のサイト(http://www.jsgo.gr.jp/)では「卵巣腫瘍の約90%が良性で、約10%が悪性とされている」としていますし、一方、国立がんセンターのサイト(http://www.ncc.go.jp/jp/)では「卵巣にできる腫瘍の85%は良性」としています。

きっと各データの母集団の内容の違いによって、統計上の数値が変動しているせいだと思われるので、「おおよそこのぐらいの割合」、「良性腫瘍が大多数らしい」といった感じでみておくといいのではないかとおもいます。

ちなみに、全卵巣腫瘍のうち85%〜90%が良性だとすると、私はわざわざ全卵巣腫瘍の残り15%〜10%に入ってしまっていて、さらにその中のうちの15%にあたる境界悪性腫瘍(粘液性)を患ったということになるんですね...。(境界悪性のページ参照)



卵巣悪性腫瘍(がん)

卵巣がんは毎年増加しつつあり、1998年度中に4,173人の女性が卵巣がんで亡くなっているそうです。日本国内の卵巣がん患者数はまだ正確には把握されていないようですが、新たに卵巣がんになる人は、1年間に6500人ぐらいいるのではないかと推定されるとのことです[4]。
【追記】3/4/2008追記
卵巣がん治療ガイドライン2007年版によると、1999年の卵巣がんの罹患者数は7314人と推計され、毎年8,000人くらいの方が卵巣がんに罹られていると推定されているそうです。 また、1996年には4006人、2005年には4467人が卵巣がん(悪性腫瘍)で死亡しており、卵巣がんによる死亡数が増加傾向にあるとも報告されていました [7]。 やっぱり増加傾向なんですね。


【追記】 12/11/2006
ちなみに、American Cancer Society, Inc :Cancer Facts & Figures 2006 [6] は、 新たに卵巣がんになる人は 20180人 、一方、卵巣がんによる死亡者数は 15310人と推定されると報告しています。 
ガンに罹る全アメリカ人女性の約3%ほどの数)

アメリカ人女性が罹るであろう全悪性腫瘍のうち(100%)、 推定罹患者数トップは乳がん(Estimated 212920人: 全体の31%) で、卵巣がんはたった3%、 乳がんに比べ 卵巣がん発症率はかなり低いです。 でも、2006年の部位別がん死亡者(女性)推定数(100%)では、 乳がん 40970人(15%)、 卵巣がん 15310人(6%)と、 卵巣がんは、女性器の悪性腫瘍の中で罹患率に比べ死亡率が高い悪性腫瘍であるということを示しています。 日本とアメリカでは衣食住など文化・社会面などいろいろな面で差異がありそうなのでこういった数字がすべて日本にフィットするのかどうかは判りませんが一つの目安にはなるかと思います。 (ちなみにアメリカの人口3億人、日本の人口1億3000万人くらい) 
(2006年12月11日加筆)


卵巣は骨盤の中にあって(腹腔内)、腫瘍が発生してもなかなか自覚症状がない、いわゆる「沈黙の臓器」(Silent Killer)といわれています。ですから、腫瘍ができていてもよっぽどの状態にならない限りほとんど自覚症状がでません。そのため、卵巣がんは進行癌の状態で発見される場合がほとんどであり、その割合は2/3にものぼるのだそうです。(私も手術前のインフォームドコンセントで同じ説明を受けました)

卵巣がんによく起こる転移として「腹膜播腫」といわれるものがあります。これは種をまくみたいにがん細胞が腹膜に拡がってゆくものです。そして腹水なども溜まることになります。



卵巣悪性腫瘍の進行期(ステージ)

FIGO(国際産科婦人科連合)進行期分類

T期:卵巣内限局
Ta: 一側の卵巣に限局
Tb: 両側の卵巣に限局
Tc: 被膜表面への浸潤、被膜破綻、腹腔細胞診陽性
U期:骨盤内への進展
Ua: 子宮や卵管に及ぶ
Ub: 他の骨盤臓器に及ぶ
Uc: 被膜表面への浸潤、被膜破綻、腹腔細胞診陽性
V期:骨盤外の腹膜播種、後腹膜や鼠径部リンパ節転移、肝表面への転移
Va: 顕微鏡的播種
Vb: 直径2cm以下の播種
Vc: 直径2cmをこえる播種、後腹膜や鼠径部リンパ節転移
W期:遠隔転移、肝実質転移


2005年度 
卵巣悪性腫瘍進行期別分布(%)
(悪性腫瘍患者総数2710)

ステージ

Ta 14.9 41.1
Tb 1.1
Tc 25.1

Ua 0.8 8.8
Ub 0.9
Uc 7.0

Va 1.0 34.2
Vb 3.9
Vc 29.4

W 7.7 7.7

不明 0.3 0.3

術前化学療法 7.9 7.9




3/8/2007加筆
日本産科婦人科学会のウェブサイトの『委員会報告ページhttp://www.jsog.or.jp/report/index.html 』内、 婦人科腫瘍委員会報告 2005年度/子宮頸癌患者年報、子宮体癌患者年報、卵巣腫瘍患者年報』 に、卵巣悪性腫瘍進行期分布進行期別治療法 などが載っていました。

←引用元:日本産科婦人科学会http://www.jsog.or.jp/report/index.html
2005年度/子宮頸癌患者年報、子宮体癌患者年報、卵巣腫瘍患者年報





卵巣悪性腫瘍の治療方法
3/8/2007加筆
手術療法と化学療法があります。下記を参照してみてください。

国立がんセンター がん対策情報センター がん情報サービス
卵巣がん http://ganjoho.ncc.go.jp/public/cancer/data/ovary.html
卵巣胚細胞腫瘍 http://ganjoho.ncc.go.jp/public/cancer/data/ovary_germ_cell.html


参考文献
[1]卵巣腫瘍病理アトラス 石倉浩、手島伸一(編) 2004 文光堂
[2]産婦人科研修の必修知識2004 2004 (社)日本産科婦人科学会  
[3]新女性医学大系36巻 1999 中山書店
[4]卵巣がん治療ガイドライン2004年版 日本婦人科腫瘍学会(編) 2004 金原出版
[5]新女性医学大系43巻 2001 中山書店
[6]American Cancer Society, Inc : Cancer Facts & Figures 2006 Pp.10-16
[7]卵巣がん治療ガイドライン2007年版 日本婦人科腫瘍学会(編) 2007 金原出版
日本婦人科腫瘍学会 http://www.jsgo.gr.jp/
国立がんセンター 
http://www.ncc.go.jp/jp/

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